『宗教なんかこわくない!』
この本はオウム真理教事件のことから宗教についてアレコレ書かれていて、だからこんな背景になりました(笑)。
あの橋本治さんの宗教の本だから絶対に面白いハズ・・・と思ったら期待以上でした。
実は、ぼくも「宗教なんかこわくない!」とずっと思っていて、それはオウム真理教事件が話題になっていた当時、自分なりにいろいろ考えて得た結論なのでした。
そう思って読むと、ぼくが考えてたのと同じようなことが書かれていて「良かった!」と思える部分と、考えもしなかったようなスゴイことがいろいろと書かれています。
スゴイのは、相変わらずこの人の「構造分析」で、実に鋭く切れ味バツグンです。
構造分析とは、いろんな要素が複雑に絡み合い、ごちゃごちゃとわけの分からなくなった問題の中から「構造=秩序」を見出し、それを問題解決の糸口にする、と言う手法で、橋本治さんはとにかくこれの名人なのです。
構造分析は「構造主義」というフランス発祥の現代思想による手法なのですが、橋本治さんは現代思想家ではないし、フランス現代思想の研究家でもないし、まして「私の本は構造主義によって書かれている」なんてどの本にも一言も書かれていません。
そのかわり「私の本職は小説家で、小説家は口から出まかせの思い付きが大得意だから、私の本も口から出まかせの思い付きで書かれてたりする」なんてことを言ってたりします。
そこで気づいたのは、そもそも構造分析というものは、口から出まかせの思い付きでしかありえないのでは?ということです。
「構造」というのは、問題の表面には現れず、人々の意識の底に隠れているものです。
構造分析の手法はまず、いろいろな人の意見を聞いたり、いろいろな資料を読んだりして、問題解決のための素材を集めます。
そして、そのような人々の意見や、資料に書かれていることを「真に受けない」ようにして、それとはまったく別のことを、口から出まかせで思い付くのです。
つまり、「アンタら口ではそう言ってるけど、ホントはこう思ってるんでしょ?」と、テキトーなことを言うわけなのですが、そのテキトーな事が案外当っていて、問題解決に有効だったりするのです。
構造主義の開祖であるレヴィ・ストロースは、様々な民族の、様々に異なる社会システムのあり方を比較した結果、「全ての社会システムは、女性を交換するシステムである」という構造分析をしました。
どこの民族も自分の社会を「女性を交換するシステム」だなんて言いませんから、これはレヴィ・ストロースの「適当な思い付き」とも言えます。
でもその思い付きであったものが、不思議と全ての民族に当てはまるところが見事なのです。
以前に紹介した『オレ様化する子供たち』 という本では、「教育は本来”贈与”なのに、子供たちは”等価交換”を求めている」というような事が書かれています。
でも、実際の生徒一人一人は、単に先生に対しふてくされたり、反抗したり、ウソをついたりしてるだけで、誰も「オレは等価交換がしたいんだ」なんてことは言ってません。
だから、それは著者である先生の「思い付き」でしかないのですが、これも不思議とほとんどの事例に当てはまるのです。
もちろん、「構造分析は、口から出まかせの思い付きによってもたらされる」というのはぼくの思い付きでしかありませんから、良い子は真に受けてはいけません(笑)
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