『「自分以外はバカ」の時代!』
以前紹介した『俺様化する子供たち』と似たようなタイトルですが、こちらは帯に描かれたマンガが秀逸で、それだけで内容が期待できてしまいます。
しかし、読み始めて程なく「こりゃダメだ・・・」と思い、あとは飛ばし読みしてしまいました(笑)。
だから全部を丹念に読めば「やっぱり良い本だった」となるかもしれませんが、それを踏まえての感想です。
この本には「若者じゃない人」の多くが、「若者」に対して思っているだろう事が書かれており、その意味で特に間違った内容ではないと思います。
ただ、それしか書かれておらず「だからどうした」という部分が全くありません。
例えばこの本では「若者は根拠もなく全能感を持っている」というようなことが指摘されてますが、「それがケシカラン」と言って終わりです。
これはかなり拍子抜けで、作者の独創性という「内容」がありません。
『俺様化する子供たち』の方は実に独創的な分析されており、そういう面白さを期待したのですが・・・
まぁ、こういう本はただ同意して納得したい人には良いかもしれません。
納得というか、自分を変えなくて済む安心感というか、そういうニーズに応える本じゃないかと思います。
あと面白いのは、この本にはグラフや図が多用されていることです。
「みんなが何となく思っていること」に対し、実際に被験者にアンケートを取ってそれをグラフにし、それが「科学的な裏づけがとれた」という印象になってます。
このアンケートについて「被験者が限られているのであくまで参考程度に」のような断りがあり、そういう控えめな態度もいかにも科学的です。
でも、日高敏隆さんの『帰ってきたファーブル』には、「物理学以外の専門分野(心理学や生物学)が、物理学の手法の真似をするのはもう古い」、というようなことが書いてあります。
例えば、魚を入れた水の温度を徐々に上げ、それに伴いエラの動く回数がどう変化するかをグラフにする・・・これは生物を物理学と同じように「数値」として扱うことなのですが、それではぜんぜん「生物」が分かったことにならないだろう、ということです。
で、『「自分以外はバカ」の時代!』で示されたグラフも、まさに同じようなものではないかと思うワケです。
しかしいかに古くなった考えだとしても、その思考法を身につけたとき自分はまだ「若者」だったわけで、それを今さら変えられないのも「若者じゃない人」の特徴です。
自分も反省しなくてはいけませんが、これはかなり難しいことです。
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