写真では伝えきれないフォトモの魅力
「図書館教育ニュース」という、中学校や高校向けの壁新聞にフォトモが紹介されることになりました。
で、以下は壁新聞の付録誌用のテキストで、限られた人しか読まないので、こっちにもアップすることにしました。
限られた文字数なので「非人称芸術」の言葉は使っていません。
何となく上から目線なのは、生徒が読むことを想定してるからですが、あらためて依頼書を確認したら図書館担当の先生が対象読者でした(笑)
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写真では伝えきれない
フォトモの魅力
フォトモとは、写真に写ったモノをハサミなどで切り抜き、プラモデルのパーツのように立体構成して製作する、3D写真の一種です。それで、フォト(写真)+モデル(模型)から「フォトモ」と名付けました。仕組みは単純ですが、実際のフォトモ作品を見ると想像以上にリアリティがあるので驚きます。それはフォトモの持つ「写真的な平面の立体」と「模型的な実際の立体」が、見る人の脳内で上手い具合にミックスされるからだと考えています。ですからフォトモ作品の本来の魅力は、写真では伝えきることは出来ません。そのためぼくは、できるだけ頻繁に「フォトモ展」を開催するよう心がけています。また、完成したフォトモをバラバラのパーツに分解し、プラモデルのような製作キットにアレンジした「組み立てフォトモ」の作品集も出版しています。これを製作すれば、誰もが実際にフォトモ独特の立体感を体験できるのです。
アートの行き詰まりから
新しいアートが見えてきた
ぼくは子供の頃から絵を描くのが好きだったので、高校の美術部を経て美術大学に進学しました。ところが美大在学中にいろいろなアート作品に接するうち「自分が素晴らしいと思えるアートは、すでに他人の作品として世にあふれている」と思うようになりました。つまり、自分自身が表現するアートに行き詰ってしまったのです。そんなぼくは気晴らしのためにプラモデルを作ったり、散歩をしたりしてました。その散歩中にぼくは「自分が知っている街にそっくりだけど、知らない街に迷い込む」という、奇妙な感覚を覚えました。美大時代に住んでいた東京都八王子市は、高校生まで住んでいた長野県長野市とよく似た地方都市で、まさに「知っているようで知らない街」なのです。そのうち、街並み自体が「街」としてではなく「自分の知らない、奇妙なアート作品」の連なりのように見えることに気づきました。例えば商店街には「パン屋さん」や「八百屋さん」などのお店が並んでいます。しかしそれらが「○○屋さんである」というのは先入観で、その先入観を取り除くとそれらの建物は「自分の知らない、奇妙なアート作品」に見えてくる・・・そんなことを発見たのです。
写真では伝わらない感覚が
フォトモで表現できる
そこでぼくは「アートではないものがアートに見えてくる」という感覚に基づき、写真を撮り始めました。しかし街を写した写真はやっぱり「街」にしか見えず、ぼくの感覚がどうしても表現できません。そこでふと、「街並みが立体なら、写真もプラモデルのような立体にすれば良い」と思い付き、フォトモの技法が生まれたのです。フォトモで表現された街並みは、プラモデルのように縮小されたことで実物にあった「機能」がなくなり、「純粋な形」として表現されます。しかしプラモデルと違い、写真を素材にしたフォトモには「そこにあったもの」としての実証性があります。だからフォトモは「街並みをオブジェ芸術のように見る」というぼくの感覚を、的確に表現する手段となったのです。
「人より優れたもの」ではなく
「人と違うもの」を生み出す可能性
結局ぼくは、一度はアートに挫折したのですが、その挫折をまっとうに克服しなかったことで、かえって新しい方向性が見つかったといえます。それは、散歩だとかプラモデルとか、一見関係ないような方に「よそ見」ばかりしたおかげかもしれません。挫折したときはそれをバネにしてもっと頑張る、という方法もありますが、それだと「人より優れたもの」は生み出せても、「人と違うもの」は生まれにくいのかもしれません。時には挫折したことにこだわらず、いろいろなものに興味を持つのも良いのかもしれません。
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コメント
はじめまして。
写真から3次元形状を作成するプログラムを作っています。
よろしければご覧ください。
http://www3.plala.or.jp/SolidFromPhoto
投稿: SolidFromPhoto | 2008年4月29日 (火) 21時43分