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2009年6月25日 (木)

ツギラマとイラスト

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ブログゼロにも告知したのだが、現在発売中の「日経アーキテクチュア」にぼくのツギラマが掲載されている。
自分のツギラマが写真雑誌に「作品」として掲載されたことは何度かあったが、写真以外の雑誌に「イラスト」として掲載されるのは今回が初めてである。
しかも編集部に依頼された被写体を撮影する、いわゆる「カメラマン」としての仕事であり、この点でも自分としては初めての経験である。

依頼内容は「渋谷ハチ公前交差点」を、そのビル群の4箇所に設置された「大型屋外ビジョン」がテーマになるように撮影することである。
編集部としては、そのような表現にこそツギラマが適しているだろうと判断し、ぼくに依頼してくれたのだ。

ただ、ぼくはフォトモと同じくツギラマも「非人称芸術」の記録目的に限定しているから、依頼があればなんでも撮影するというわけにはいかない(そうでなければ「美術家」としての立場が成立しない)。
しかし「渋谷ハチ公前交差点」という場所は、「非人称芸術」と解釈しても十分に魅力的な場所であり、それで仕事を請けることにしたのだ。

撮影はまず昼間に行なったのだが、この時間帯は「屋外ビジョン」に空の反射が写り込んで、ほとんど目立たなくなることが判明した。
しかし夜だと建物のシルエットが判別できなくなって、ツギラマとしてつまらなくなるだろうと思い、その中間の夕方に再撮影したのだ。

この目論見は見事に成功し、なかなかいい雰囲気のツギラマになると共に、肝心の「屋外ビジョン」もはっきりと写すことができた。
実は、周囲のビルと同じ露出値で撮影すると「屋外ビジョン」がオーバーになってしまうため、このコマだけはアンダーにして撮っている。
そのため「屋外ビジョン」の周囲だけが暗くなり、さらにこれを目立たせるというツギラマならではの効果をもたらすこともできた。

誌面に掲載されたツギラマは完全な平面で、実際にプリントをツギハギしたツギラマ本来の醍醐味は失われている。
しかし通常の写真とは異なる「多視点」であることの面白さは、ある程度は表現されているように思う。

しかし何といっても、自分の作品が単体ではなく「カッコいいレイアウト」として掲載されているのは新鮮である。
実は、「芸術至上主義」の理念に忠実に従うと、「カッコいい」とは既存の価値に従うことでしかないから、「芸術はカッコよくあってはならない」のである。
しかし、現在の「ポストモダンアート」は古臭い「芸術至上主義」なんかに囚われず、「カッコいいのがアートである」ということになっている。
つまりぼくはイマドキの「ポストモダンアート」の流儀になかなか乗ることができなかったのだけど、実際にはこんなふうに見えるのかと、あらためて思った次第である。

いやイラストとアートは基本的には異なる分野ではあるが、建築や写真などと共にクロスオーバーしているものまた事実で、「日経アーキテクチュア」はそれを体現した「カッコいい雑誌」のひとつだといえる。
と思ったら、昨日本屋で見かけた小説の表紙に、友人の彫刻家の西尾康之さんの作品が使われたのを発見してしまった。
実はぼくのフォトモも一度だけ本の表紙に使われたことがあるのだが、このようなクロスオーバー的な使用が増えると、アートの分野はもっと面白くなるのかもしれない。
とは言え、自分を含めてアートを目指す人は別にイラストを求めているわけではないから、そこを勘違いすると本末転倒になってしまうだろう。

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