『変身は言葉から デュシャンと対話するフォトモ』
高松市美術館で展示の準備中ですが、デュシャンの『トランクの中の箱』の中身を出してもらってるところです。
これとフォトモをどう組み合わせるのか・・・は実はまだ考え中で、考えながら作業してます。
以下、企画展のパンフレット用のテキストですが、コンセプト(というか心構え)はまたちょっと変わるかも知れません。
今回は個展ではなく、『コレクション+(プラス) メタモルフォーゼ!!!!!変身アート』の一環です、念のため。
『変身は言葉から デュシャンと対話するフォトモ』
私は今回、自分の作品とマルセル・デュシャンの作品との比較展示を、自らキュレーションすることとなった。デュシャンは言わずと知れた20世紀最大の芸術家であり、自分ごときとを比較するのは、実におこがましいことである。しかし「自分とは何者か」は自分だけ見てもわからず、「他者」との比較によってのみ捉えられる。それは芸術についても同じであって、だから今回はあえてこの「暴挙」を決意したのだ。私は「非人称芸術」という独自のコンセプトによって、芸術家の主体的創造性に疑問を投げかける。一方で私はその「相互的作用」として、写真を素材とする小さな模型「フォトモ」を制作する。そしてこの行為は、マルセル・デュシャンが提示した「レディ・メイド」のコンセプトと何らかの関係があるかも知れない……。何となくそう思っていた私は、美術館による「コレクション+」の企画を利用し、この疑問に対する答えを得ることにした。そこであらためてデュシャンについて勉強してみたのだが、そのうち答えなど簡単に得られるものではないことが、判明する。実はデュシャンは「レディ・メイド」について、科学のように明確な定義を与えていない。デュシャンは「レディ・メイド」のうちに、自分でも定義不可能な要素を認めており、だからその解釈の可能性によって人々を惹きつける。その反面、生半可で身勝手な解釈に陥る危険性も孕んでおり、私自身がすでにその過ちを犯している可能性もある。デュシャンは便器やシャベルなどの既製品に「言葉」を与えることで、それを「レディ・メイド」という形式の芸術に変える。一方でデュシャンは言葉を信用せず、あらゆる論理は前提の反復に過ぎないと批判している。またデュシャンは、芸術家は自ら生み出した芸術の意味を知ることは出来ず、それは鑑賞者だけが知り得るのだ、とも語っている。だから私はまず自分の作品「フォトモ」を差し出し、それらをデュシャンの作品と並べ、あとは沈黙するしかないのかも知れない。そうすれば「フォトモ」は自律的にデュシャン作品との「対話」をはじめるだろう。いや実は、美術館所蔵のデュシャン作品『トランクの中の箱』の中身に、「レディ・メイド」のミニチュアとしての「フォトモ」!が含まれており、そこでもう「対話」が始まっていたのだ。今回は通常のフォトモの他に、過去に他人が写した写真を素材にした「復元フォトモ」や、「非人称芸術」の生成過程を示した『イメージの連鎖』と題したシリーズ、デュシャンが言葉でのみ書き記した「相互的レディ・メイド」の概念モデルなども展示する。今回の企画展から、どのような「対話」を聞き取るのかはまさに鑑賞者に委ねるしかない。もし「非人称芸術」のコンセプトが私だけの妄想でなければ、そこには私自身が決して知り得ないような「客観的妥当性」が含まれているはずなのだ。
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