高松市美術館ではデュシャンが見られます!
3月28日まで開催中の高松市美術館の企画展『コレクション+(プラス)メタモルフォーゼ!!!!! 変身アート』だが、その紹介記事を某メディアに持ち込んだところボツになってしまったので(笑)、あらためてこのブログで順次紹介しようと思う。
以前の記事でも書いたのだが、ぼくがキュレーション(笑)した『デュシャンと対話するフォトモ』というコーナーはいろいろと失敗したと反省しているが、しかしぼくの作品が「スカ」であっても、少なくともデュシャン作品の「実物」は見られるわけで、今回はそれについて。
まず右のデュシャンの肖像写真のポスターなのだが、以下のサイトにあるのと同じもののようだ。
http://www.artnet.com/artwork/426022874/425363454/marcel-duchamp-the-oculist-witnesses-poster.html
デュシャンは透明なガラスを持って写真に撮られ、そこに『大ガラス』の構成要素のひとつ『眼科医の証人』の図柄が銀で印刷されているという、非常にカッコイイもの。
このようなカッコイイセンスはぼくは「皆無」であって、その意味では対極的だし、全く合わないと言えるかも知れない。
右は『階段を降りる裸体No2』複製印刷で、郵便切手が貼られそこにサインが書いてあるのがまたシャレている。
デュシャンは生涯に残した作品は少ないが(最小限の制作しかしなかった)、そのほとんどはフィラデルフィア美術館に展示されている。
だから、それ以外の美術館が所蔵しているデュシャンは基本的に複製品であり、高松市美術館も例外ではない。
もちろん、デュシャンはアートにおけるオリジナルと複製の関係にも疑問を投げかけたので、デュシャンの複製品には特別の意味があったりするのだが。
で、さらにこの左隣にマン・レイによる撮影の『埃の培養』のオリジナルプリントがあるのだが、記録を撮り忘れたので省略・・・
こちらの壁には『エッチングシリーズ・大ガラス』を並べてみた。
『大ガラス』についてはここで説明しないが、ともかくその全体像の図柄と、各要素の図柄をエッチングにした連作で、1965年という晩年の作である。
興味深いのは、元の『大ガラス』がアーティストの「手さばき」を消すために、金属線を膠で貼り付けるといった「機械的技法」で描かれているのに対し、このエッチングシリーズは半ばフリーハンドで描かれ、ガリガリとした味わい深い「手さばき」があらわれている点だ。
などと言いながら、実のところぼくのセンスと頭脳では『大ガラス』は全然分からず、そういう分からないものを分からないまま展示したのも、良くなかったかも知れない。
ただ、ぼく以外の「好きな人」にとってはたまらない作品のはずなので、じっくり味わっていただければと思う。
これはぼくのセンスでは非常によく分かるし好きな作品なのだが、左が『L.H.O.O.Q』で『ひげの生えたモナリザ』として有名な作品。
さらに右の『ひげをそったL.H.O.O.Q』とセットなのがポイント高い。
意外だったのが『ひげをそったL.H.O.O.Q』の実物がとても小さいことで、これは市販のトランプそのものなのだ。
デュシャンはモナリザの絵柄が印刷されたトランプを、個展のオープニングの招待状に貼り、そこに『ひげをそったL.H.O.O.Q』と書き添えたのだ。
もう一つ意外なのが『L.H.O.O.Q』のオリジナルが1919年の制作だったのに対し、『ひげをそったL.H.O.O.Q』の制作年が1965年とだいぶ開きがあることだ。
もしかするとデュシャンのことなので、『L.H.O.O.Q』の制作後ほど無くして『ひげをそったL.H.O.O.Q』を着想したのだが、すぐには発表せずにその機を46年間伺っていたのかも知れない。
デュシャンはレディ・メイド『泉』をスキャンダルが巻き起こるよう手際よく発表したり、20年間秘密裏に制作した『遺作』を自分の死後に公開するよう手はずしたり、ともかく「機を見る」のが非常にうまい人であり、要領が悪く無計画なぼくとはまさに正反対だ。
で、これが高松市美術館所蔵のデュシャン作品のうち、ぼくが最も感銘を受けた『トランクの中の箱』なのだが、詳しい紹介は次回にしよう。
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