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2010年4月28日 (水)

世界史で洗脳

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一昨日やっと『バウッダ[仏教]』を読み終えたのだが、普通の入門書よりもちょっと専門的で、量も多めで読むのは大変だったのだが、どれだけ頭に入ったかはともかく何とか読み終えた。
恐らくこれまでの自分だったら、途中で投げ出していたかも知れないが、何というか「難しさそのものも味わう」という態度で臨んでみたのだった。

で、次に何を読もうかと思って、同じ中村元さんの著書で大乗仏教の基本とされる『龍樹』を買ってみたのだが、これを読む前に「そもそも世界史が全然分かってないじゃないか!」と言うことにあらためて気づき、以前買ってあった『一冊でわかるイラストでわかる図解世界史』を本棚から引っ張り出したのだ。

とりあえずはじめの「文明の誕生」だけじっくり読んだのだが、これだけでもだいぶ頭がスッキリする。
というか、読み進むたびに脳のシワにたまった茶色い垢が洗い流されるようで、まさに「洗脳」といった感じだ。
いや、これくらいですべての垢が洗い落とされるわけではないだろうが、ともかく使っていない脳みそというのは垢まみれか錆まみれであって、そういう汚れは新たな知識によって洗い流さなければならない。

というか、世界史の基本なんて中高時代にマスターすべきもので、「新しい知識」でも何でもないはずだが、ぼくはその当時は(これまでも)「歴史は苦手」というふうに頭から決め込んで覚えることをサボっていたのだった。
それを今から取り戻すのは「手遅れ」という気もするが、最近興味を持っているユダヤ・キリスト教にしても、仏教にしても、「世界史」の基本を欠いたままで十分な理解は得られないだろう。

ぼくが言うまでもないことだが、歴史というのは「知的体系の脊椎」のようなもので、それなくしてはあらゆる知識が無脊椎動物のようにぐんにゃりしてしまう。
いや、無脊椎動物にも概念的には「骨格」があるのだが、人間が脊椎動物である以上、知的体系も脊椎に沿って整理した方が良いのかも知れない。

とこのように、いろいろな物事を生物学に例えると、「生物学の基本」も「知的体系の脊椎」になるのかも知れないが、しかし例えば生物進化論があくまでも人類史のアナロジーであるわけで、やっぱり基本は「歴史」にあるんじゃないかと思う。

いや普通に生活する上で、学校時代に勉強した「世界史」なんか忘れても知らなくても支障はないだろうが、ぼくは「非人称芸術」などという大口を叩いているので、やはりそれなりの知識をベースにしてないと、そんな大それた口を叩くだけの資格がそもそも無いのだ。
ということに、仏典『スッタニパータ』やデカルトの『方法序説』やオルテガ『大衆の反逆』を読んであらためて気づいたのだった。

特にオルテガの「大衆」の概念は、現代に特有の問題であり、都市に特有の問題でもあり、だから「非人称芸術」の問題とも直結しているはずだ。
だから「非人称芸術」の考察を深める上でも、「都市の歴史」を知ることは重要なのだ。
例えば、古代の都市国家に「非人称芸術」はあり得たのか?、あるいはもっと最近の日本の江戸時代に「非人称芸術」はあり得たのか?、というような考察からも「非人称芸術」の輪郭が明らかになるだろうと思うのだ。

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コメント

ジャレド・ダイアモンドが進化生物学の視点で世界の歴史を書いた「銃・病原菌、鉄(草思社)」を一読されることをお薦めします、出版されたばかりのを店頭で見かけたときにはタイトルとカバーデザインでドン引きだったのですが、パラパラと中身を覗いてみたら求めていた内容だったので即座に買いました。
これを読むと文献歴史学者が書いた歴史書など読む気がしなくなります、歴史年表は必要ですが。。。

投稿: 遊星人 | 2010年5月 5日 (水) 16時37分

ありがとうございます。
アマゾンのレビューは70軒もあって、絶賛の嵐ですね。
「 もっと早く読めばよかった・・・」というレビューもあるので、早く読まないとw

投稿: 糸崎 | 2010年5月 6日 (木) 00時04分

はじめまして。

実はこのたび「仏典」をテーマに文章を書く関係で
このキーワードで検索しているうちに、
こちらを覗かせて頂くことができました。

勉強させて頂きました。

ありがとうございました。

このブログも仏典がテーマでしたが、
面白かったですよ。
 ↓↓↓↓↓↓
http://ameblo.jp/kiku-tan/

投稿: 千葉直樹 | 2010年6月12日 (土) 11時02分

いちおう芸術のブログなんですが、芸術以外の役に立てたようで良かったですW

ぼくはまだ初期仏教しか読んでないんですが、大乗仏教や日本仏教も興味ありますね・・・

紹介していただいたブログも参考にさせていただきます。

投稿: 糸崎 | 2010年6月13日 (日) 05時00分

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