反ー反芸術(瀬戸内国際芸術祭2010)
(直島「季禹煥美術館」安藤忠雄設計)
去る10月22日〜24日、「建築系ラジオ」が主催する「瀬戸内国際芸術祭2010」のツアーに参加してきた(25日まで個人的に延長)。
それなりにお金がかかるし、実のところ本来的には「全く興味がない」ツアーだったので参加するかどうか直前まで迷ったのだが、例によって「自分を変える実験」のため参加したのだった。
「自分を変える実験」というのは、ひとつは「反ー反写真」で、これがある程度成功したので、今度は「反ー反芸術」も試してみようと思ったのだ。
ぼくは「非人称芸術」というコンセプトを掲げているが、これはいわば「反芸術」的態度なのだが、あらためて気づくとぼくは「芸術」が何であるか深く知らないまま「反芸術」を行っていたのである。
それに「非人称芸術」とは何か?も自分で知った気でいるようでよく知らず、それを知るには「非人称芸術」の外部へ出る必要がある。
そのようなわけで、ぼくは「反芸術」をさらに反転させた「反ー反芸術」を行う必要があり、その一環として「瀬戸内国際芸術祭」をみんなと一緒に見に行くことにしたのだ。
みんなと一緒であることの利点は、自分の主観以外の「客観」を知ることができる点である。
ぼくは芸術に対しては常に「反芸術」の態度で構えてしまうから、そういう主観を「棚上げ」にして、「芸術は素晴らしい」と思う気持ちの客観に身を任せながら「芸術」に接してみようと考えたのだ。
通常のぼくのセンスでは「街のアート」なんてクダラナイのは分かり切ってるので、そういうのは全部無視してひたすら「路上」を歩き回り「非人称芸術」を堪能するだろう。
「非人称芸術」とはつまり「芸術として用意されたもの」に反する行為であり、その意味での「反芸術」でもあるのだ。
しかし今回のツアーではそのような「路上モード」はオフにして、みんなと同じ「アートモード」に切り替えながら歩くことを、あらかじめ自分で「決定」してみたのだ。
つまり、「用意された芸術」を用意されたまま素直に「芸術」として受け取り、「みんな」と一緒の気持ちで鑑賞するのである。
これはラカンのいう「他者の欲望」のコピーであり、それを意図的に行う実験であり、それこそが「反ー反芸術」なのである。
今回撮影する写真も、いつもの「非人称芸術の記録写真」は全く撮らないことに決めて、「カッコいいアートをカッコよく撮る」ことに徹してみた。
これは普通のカメラマンの写真と同じなのだが、自分にとっては「反ー反写真」であり「反ー反芸術」なのである。
いや、実のところ島を訪れる直前まで「芸術」の合間に「非人称芸術」を堪能しようと思ってはいたのだが、実際は島内に設置された作品をできるだけたくさん見ようとすると、けっこう早足で回る必要があり、よそ見をする余裕もないのだ。
早足といっても、ぼくの「路上」での歩みはきわめてゆっくりで、それが人並みにスピードアップした程度なのだが、ともかく次の作品を目指して脇目もふらず歩くという「みんな」の気持ちに、できるだけ同化することを試みたのだった。
もちろん「みんな」と言っても今回のツアー参加者は一枚岩ではなく、素朴にアートに感動する学生から、辛口で批評する専門家までいろいろだ。
しかし、ぼくの本来のスタンスが「みんな」とは異なるのも事実で、だから今回の自分はできるだけ「みんな」に同化し、自分も「客観」の一要素となるよう努力してみたのだ。
ということで、自分としてはまことに「珍妙」なことを行ってみたのだが、これこそが「前衛」と言えるかもしれないw
少なくとも、今回のツアーでのぼくはフラストレーションの発生もなく、実に楽しい気持ちで参加でき、その意味で「実験」は成功だったといえる。
恐らく、本来の自分の感性を「押し殺す」のではなく、「棚に上げる」という心構えが功を奏したのかも知れない。
もちろん、棚に上げたまま無くなってしまう可能性はゼロではないのだが、それを確認するための「実験」でもあるのだ。
ちなみに「建築系ラジオ」のサイトに「瀬戸内国際芸術祭2010──犬島、直島の建築とアート作品をめぐって」という音声ファイルがアップされている。
これはツアー1日目の夜に収録されたもので、ぼくも参加している。
この時のぼくは一日歩いて疲れてる上に酔っぱらって、おまけに徹夜明けでヘロヘロなのですが、興味のある方は聞いてみてくださいw
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