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2010年10月22日 (金)

目の前の他者と「大文字の他者」(彦坂尚嘉さんへの返信)

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このブログ、自分ではメインのつもりなのですが、放置気味でなかなか更新できなくてすみません。
しかし、もう一つ放置気味なのが、彦坂尚嘉さんの「糸崎公朗さんへのメッセージ」と題した音声ファイルへの返信です。
これがどういうわけか、栃原比比奈さんのブログにアップされてるのですが、返信がどうも後回しになってました。
これはぼくが彦坂さんに出したメールの返答として語られたものですが、イキナリこうして公開されるので恐ろしすぎます(笑)
しかしまぁ、ぼくももはやこういう目に遭うだろうということを予想しつつ、わざと挑発するようなところはあります・・・

http://tochiharahiina.blog.so-net.ne.jp/2010-10-13-3

で、これを聞くとぼくが「パンとアートの区別が付かないような愚か者」のように思えて驚いてしまいますが、そういうことはありません(笑)
それで自分がどんなメールを出したのか確認してみると、以下のようなものでした。

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彦坂 尚嘉 さま

> マンガ自動作成ソフトの話ありがとうございます。
> 出来るとうれしいですが、しかし使いこなすのは大変でしょうね。

自動とはいえ手間は掛かりますが、手間をかければマンガが書けない人も書けるようになる・・・しかしけっきょくはブログと同じで、手間をかけていいものを作る「気概」のある人は限られますね。
ところで気体分子ギャラリーですが、「たけくまメモ」にこんな記事があったのを思い出しました。
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2009/07/post-523f.html
ここに書かれた、自分でつくったものを自分で売る「町のパン屋さん」をアートに置き換えると、気体分子ギャラリーになるのかも知れません。

糸崎公朗

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ここで言ってるマンガ自動作成ソフトは、「たけくまメモ」に載ってたこれのことです。
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/post-eec6.html
で、同じブログから違うネタを彦坂さんにふってみたのですが・・・
まぁ、ぼくのつもりとしては「自分でつくったものを自分で売る」という部分において「町のパン屋さん」=「ネット時代の漫画家」=「気体分子ギャラリー」としたまでです。

竹熊さんはつまり、「ネット環境が整備されたこれからの時代は、漫画家が自分のマンガを自分で売るのが一般化するかも知れない」と書いてるわけで、だったら「美術家が自分の作品を自分で売る時代」になってもおかしくないわけで、そう考えると彦坂さんの「気体分子ギャラリー」はその先鞭である・・・と思ったのです。
実はぼくは自分の作品を直接販売したことが無く、これについては非常に興味を持っていたのです。

しかし彦坂さんのメッセージを聞くと、ご自身はそういうところに全く興味がないように思えます。
つまり、彦坂さんはいわば「孤高のアーティスト」ですから、他人に興味がないというか、自分が始めた新しい試みに対し追随者が出ることなど全く眼中にないのかも知れません。

彦坂さんに対し「他人に興味がない」などというとまた反論されそうですが、「他人への興味のなさ」も人によって種類が異なり、彦坂さんのも独特の感覚をお持ちのように思えます。
以前彦坂さんは「自分は目の前の個人に対し話をしているようで、実は「大文字の他者」に対し語りかけているのだ」というように言ってました。
「大文字の他者」とは個人を超えた普遍的な他者で、分かりやすくいうと例えば小説家が想定する漠然とした読者のことです。

それは美術家も同じであり、たとえ個人に販売するための作品であっても、美術館などで多くの人々に鑑賞されたり、自分の死後も歴史として残るような、そういう「大文字の他者」に対して制作するのです。
そして美術家が美術について語ることは、語りながら美術について思考してるわけで、だからその美術論は「目の前の個人」ではなく、それを超えた「大文字の他者」に対して語られるわけです。

もちろん、ぼくもそのつもりでこのブログを書いてたりするのですが、彦坂さんはその傾向が非常に顕著で、例えぼくを目の前にしゃべっていても、目の前のぼくなど全く眼中にないという感じで、一人でどんどんしゃべり続けます。
そう思って彦坂さんのメッセージを聞くと、「ぼくのつもり」は全く無視で(笑)、「パン屋と美術家」をお題に自分の語りたいことだけを語っているという感じに思えます。
彦坂さんのお話の内容自体は、実に面白くてためになるのですが、自分も「大文字の他者」の一部になって聞かないと、おかしなことになってしまいます。
そのあたり、栃原比比奈さんも分かってらっしゃるようで、ブログの記事にも以下の断りを書いてくれてます。

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録音内容:糸崎公朗さんからの彦坂尚嘉氏にあてたメールを巡って、彦坂尚嘉氏の考えについて語る。

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あくまで「メールを巡って」ですから、「メールの核心」は眼中になく彦坂氏の考えについて語ってるわけです。
ということで、読者のみなさんはそのあたりを差し引いて、お聞きいただければと思います(笑)

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