« 「陰謀論」の楽しみ方 | トップページ | 古代ギリシアの情報社会 »

2011年7月10日 (日)

トランスフォーマーと陰謀論

先日DVDで映画『トランスフォーマー』を見たのだが、なかなか興味深い描写があった。
この映画での「トランスフォーマー」とはエイリアンの一種なのだが、これが地球に襲来しアメリカ軍と交戦する極秘映像がネットに流出し、それを見た大学生が「これ、CGじゃないんだぜ!」叫ぶシーンがある。
もちろんそれは実際にはCGで描かれたエイリアンなのだけど、映画の中では「現実」として扱われている。
しかしCG技術が発達した結果、テレビやネットに流れた映像が本物なのかCGなのか、その判別ができにくくなっているのもまた事実だ。
という現在の世界が置かれた状況を、この映画シーンは皮肉を込めてさりげなく描いているのだ。

現代はグローバル化の時代であり、人々の目は国境を越えた世界規模へと開かれている。
しかし個人の能力には限界があり、実際の自分の目で世界をくまなく見て歩くことはできない。 だから自分が実際に見ることのできない世界規模の状況は、「情報」を使って認識することになる。
自分の「生の視覚」が及ばない隙間を「情報」で埋めながら、世界規模の認識を獲得している、と言い換えることもできる。
現代人は自らの五感による「直接知覚」の他に、情報という「間接知覚」を使いながら、自らの「環世界」を認識している。
直接知覚は自ら現地に赴いて見聞きする「能動行為」であるのに対し、情報による間接知覚は「受動行為」だ。

だからもし、与えられた情報に「ウソ」が含まれている場合、その人が認識する「環世界」もまたウソに歪められてしまう。
他人に「ウソの情報」を与え、その「環世界」を自分の思うがままに歪めてしまう行為を「洗脳」と呼ぶのだとすれば、情報化社会に生きる現代人の多くが「洗脳」の危機にさらされている。
と、原理的に言うことができるだろう。
もちろん、原理の存在とその実行は別問題だが、こういう状況だからこそまことしやかな「陰謀論」も囁かれるようになる。


これは、前回の記事で紹介した「陰謀論」を唱えたシリーズ動画の続き。
ここでは311の取材をしていた現地特派員が、貿易センタービルに突っ込んだ2機目の旅客機に対しノーコメントだったことを引き合いに出し「飛行機はCGなので現場の人には見えていない」「だから飛行機は突っ込んでいなかった」と結論づけている。

だがしかし、現地特派員だってたまにはよそ見するだろうし、例え見てたとしても想像を絶する出来事に事態を把握できなかっただけかも知れない。
いやもしかするとこの動画自体、「特派員の音声」だけを他ニュースから合成した「偽ニュース映像」の可能性だってある。
このように、あらゆる情報に騙されないよう気をつける必要がある。

しかし、この「陰謀論」の内容がいかに荒唐無稽でバカらしく思えたとしても、それを100%否定する根拠をわれわれは持たない。
だからぼく自身としては、このシリーズ動画が主張する「911はねつ造だった」とか「アメリカの月面到達もねつ造だった」とか「世界中の政治家やセレブが悪魔教の信者だ」とか、いちいち文字に書き起こすのもバカらしいほどの「陰謀論」が、例え事実であったとしても、大して驚きはしないだろう。
事実がどうであろうとも、「情報」というバーチャルリアリティーの中でわれわれが生きていることに、変わりはないのだから。

いや実際は、ぼくは日本の311以降のあまりに荒唐無稽な出来事の数々に心底驚いてしまったのだが、それ以来、たいていのことでは驚かない耐性が身に付いてしまったのだ(笑)
大地震や大津波にももちろん驚いたが、それは自然現象なのでその意味では納得ができる。
しかしぼくははじめに強い衝撃を受けたのが、原発事故に対し日本政府が何の対応もせず、子供たちを含めた近隣住民を事実上「見殺し」にしようとしたことだ。
続いて政府は子供たちを疎開させず、そのかわりに放射能の年間許容量を基準の20倍も引き上た。
まぁ、例を挙げればきりがないが、日本政府の一連の対応は全くもって荒唐無稽としか言いようがない。
このような政府の対応に対する日本国民の反応も不思議なもので、最近では@YutanLoveSea99さんの一連のツイートにあらためて衝撃を受けてしまった。

だからもし、たとえ「311は小型核爆弾による人工地震によって引き起こされた」というデタラメな陰謀論が「事実」だったとしても、もう既に自分が存在する現実が十分にデタラメなのだから、それ以上は大して驚きもしないだろう。
むしろ、日本政府が「悪い外国人」の手先で、そのために対応や言動がおかしかったのだとすれば、そっちの方が辻褄が合って安心する(笑)
ぼく自身も「人間は昆虫だった」なんて言う珍説を唱えずに済んだかもしれないのだ。


と言うわけで、「陰謀論」に対しあまりに強い拒否反応を示す人は、何か別のものに「洗脳」されている可能性がる(笑)
安易に他人に騙されない人は、「陰謀論」も知的なジョークとして楽しむくらいの余裕があるのかもしれない。

|

« 「陰謀論」の楽しみ方 | トップページ | 古代ギリシアの情報社会 »

思想・哲学・宗教」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 「陰謀論」の楽しみ方 | トップページ | 古代ギリシアの情報社会 »