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2012年5月 3日 (木)

万能感と共同作業

自分一人で悩みを抱え込んでも、何も解決できずに悩み続けるだけである。
同じように、自分一人で仕事を抱え込んでも、はかどらないまま何もできずに終わってしまう。

自分の悩みは共同体の中でしか解決し得ないし、自分の仕事は共同体の中でしか遂行し得ない。
自分の事は他人の為だと思い、他人の事は自分の為だと思えば、どんな作業も捗る。
それが共同作業の、本来の利点だと言えるだろう。

この共同作業の利点を、スポイルする要因に「万能感」がある。
万能感のある人間は、悩み事も仕事も一人で抱え込み、何も解決せず達成もせず、万能「感」の中に閉じこもる。
万能感を克服した人間は、悩み事も仕事も他人と共有し、あらゆる事を解決し遂行する。

劣等「感」は、万能「感」の裏返しであり、どちらも《想像界》の産物の、単なるイメージにすぎない。(*注)
実際に優れている事と、実際に劣っている事は、ともに実際的には意味がない。
優れている事や、劣っている事に、特別の意味を見出すのは、優越感や劣等感など《想像界》の産物のイメージでしかない。

そもそも物事の優劣は、物事それ自体に具わっているのではなく、自分の「万能感」が作りだしたイメージに過ぎない。
物事の優劣にこだわる人は、自身が自分の「万能感」に縛られているのを知らない。
自分の中の「万能感」を野生のまま放置する人は、これに振り回されて「自分」というものを失っている。
誇り高い人は、自分の中の「万能感」を撃ち殺すことなく、上手く手懐けてコントロールする。

実のところ、自分の欠点を愛せない人に、物事の優劣は判断できない。
「劣った自分」を受け容れ愛する事が、物事の優劣を判断する「基準」となる。
「万能感」に支配された人は「劣った自分」を受け容れられず愛せず、物事の優劣を判断する「基準」を持たず、その為に常に間違える。

「万能感」に支配された人は、それが満たされないと「劣った自分」を憎悪し、劣等感にさいなまれる。
あるいは「劣った自分」を認めることなく、ひたすら他人を憎悪する。
そして自らの「万能感」が満たされたことの喜び(ナルシシズム)は、「万能感」が満たされない場合の憎悪と表裏一体であり、相殺されて無意味である。
従って「万能感」が克服されれば全ての憎悪は消滅し、ナルシシズムも消滅する。
__

*注
この箇所の補足説明だが、まず人間は、目に写る像が何であるか?という世界像を、「言語」を介して理解する。
人間は目でものを見るが、自分が見たものは何であるか?は言葉によってしか理解できない。
そして、言葉と言葉は互いに連鎖し合い「物語」を形成し、それがその人の「世界観」となる。
だから人間にとって、世界とは「物語」なのであり、同時に「世界=物語」ではないわけで、だからこの場合の「物語」とは「喩え話」なのである。
人間は「喩え話」を使って世界を認識するのであり、人間にとって世界は「喩え話」として存在する。
つまり「物事の優劣」もそんな「喩え話」の一つに過ぎず、だからこだわって振り回されたりするのは損なのだ。

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コメント

 確かに、『独りで作業を処理することは、往々にして信頼し得る仲間と友に作業を処理することに対して、とても効率が良くない』、と私も思います。

 仰られたことを私なりに噛み砕くならば、
『集団欲を満たしてくれる』、更にはもしかすると『自分を受け入れてもらえる』、そんな快の『感情・期待・認識』を抱きつつ仕事を行うならば、きっと内容が捗るでしょう。

 理想を実現することに対する喜び(つまり達成感)は実に心地よいです。
 ただ、感情に飲まれ己を見失ってしまうと、ろくなことはありませんね。

 今という瞬間に得られる感情を大事にすることは、生きる上で大切だと思います。
 それと同時に、自らを省みて【どのように生きることを良しとするか?】、その基準作りはこの上なく大切だ、とも思います。

 他人には他人の考え方があることを踏まえた上で、自分自身の(世界から学習した)基準・信念を踏まえて適切に行動を示す。
 そういった思考の際の観点の再確認を行えば、自分を含めたより広い範囲の人間をより深く容認・承認することによって、愛していくことが楽になるのではないでしょうか?

投稿: なつ | 2012年6月14日 (木) 17時06分

コメントありがとうございます。
返信が遅くなり申し訳ありませんが、新たな記事を書きましたので、そちらをご覧いただければと思います。

投稿: 糸崎公朗 | 2012年6月16日 (土) 08時22分

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