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2012年7月 7日 (土)

言語と幽霊

パソコンにはデータの圧縮、という技術があるが、これが可能なのは、そもそも人間の意識に圧縮機能があるから。
なぜ意識に圧縮機能があるのかと言えば、意識を生み出す言語に圧縮機能があるから。
そのような、人間に本来備わる圧縮機能を道具として外部化したのがパソコンのデータ圧縮技術だと言える。

例えば、ぼくは記憶力が弱いせいか、大学時代に亡くなった父親の事もほとんど忘れてしまっている。
ところが夢の中では時折、そんな父親が非常にリアルな存在として登場する。
つまり意識の上で父親の記憶は圧縮されており、夢の中ではその記憶が展開され、忘れたはずのリアルな父親が立ち現れるのだ。

亡くなった父親の事に限らず、人間の意識には死者たちの記憶が圧縮されている。
そして夢の中ではその記憶が展開され、死者たちがリアルな存在として蘇る。
そして意識の上で圧縮されているはずの死者たちの記憶が、ふとした拍子に展開されると、それが幽霊や霊界となって現実世界に立ち現れる。

意識の上で圧縮されているはずの死者たちの記憶が、ふとしたはずみで展開しその結果立ち現れた幽霊や霊界は、幻想や錯覚なのか?
と考えるとと実はそうではない。
これは夢の中に立ち現れる死者たちが、決して幻想ではないことを意味している。

なぜなら、人間が現実の他者と接している時、相手の全てを認識し理解しているのではなく、自分の想像や思い込みで補完した相手と接しているから。
つまり人間にとっての他者とは、半分は文字通りの他者だが、もう半分想像や思い込みによる自分自身の創造物なのである。

そう考えると、夢の中で自分に語りかける他者も、半分は文字通りの他者であり、もう半分は自分自身の創造物であり、その意味で夢の中で語りかける死者や、目の前に立ち現れる幽霊と、本質的な違いはないのだ。

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コメント

むずかしい内容が、自分にも分かりやすく書いてあったりするので興味深い。
自分がどう思われるかをあまり考えずに、色々な意見を書いているところが、すごいと思う。

個性や主張がハッキリしていると、反感を買ったり、叩かれやすかったりするものの、芸術家なのだなと、感心した。

立体の紙細工とか、すごいなと思う。普通に考えつかない。

きっと、夢の中で見るものも、一般的な人とは見える次元が違うんだろうなぁと、不思議な気持ちになった。

投稿: 感想。 | 2012年7月20日 (金) 22時00分

コメントありがとうございます。

>自分がどう思われるかをあまり考えずに、色々な意見を書いているところが、すごいと思う

まぁ、あえて言えば、自分がどう思われてるかを考えずに書いている、と読者から思われる事を意識して書いていると言えますね。
それはそもそも作品がそうで、そういう意気込みでなければアーティストとして、時代の変革に参与できないのです。
他人の反感を気にしてアートを制作しても、それは世間のお追随で、歴史に残る作品にはなり得ません。
「個性」というものも、自分を本来的に備わっていると言うより、いろんな経験を積みながら後天的に創り上げるものだと思っています。

>個性や主張がハッキリしていると、反感を買ったり、叩かれやすかったりするものの、芸術家なのだなと、感心した。

自分の身の回りの人々に影響されるのではなく、芸術や哲学の古典に遡って影響されるほど、自分の個性が際立って形成できるはずだと思います。

>きっと、夢の中で見るものも、一般的な人とは見える次元が違うんだろうなぁと、不思議な気持ちになった。

自分の経験で言えば、夢の内容は凡庸でしかなく、それよりもいろいろな知識を得ながら経験積めば、身近な現実が驚異的世界として立ち上がり、それが自らのアートの糧になるのです。


投稿: 糸崎公朗 | 2012年7月21日 (土) 01時58分

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