斉藤義重・作品画像
わが師、斎藤義重は2001年6月13日未明に永眠されました。まさに「現代美術の巨星墜つ」です。変遷を重ねた20世紀美術を真摯に受けとめ、その流れ を自らの作品の内に体現した作家は他に見当たりません。まさに20世紀という時代が醸し出した作家でした。
斎藤は、中学時代よりセザンヌやゴッホらの作品に親しみ、油彩で風景画や人物画を描きました。しかし、1920年(大正9)に東京で開催されたロシア未
来派の亡命作家たちの展覧会場で、彼らが作品に加筆する姿を目撃し、あたかも「文章を書くような」描き方に強い衝撃を受けます。印象派的な傾向の強い当時
の美術団体にはなじめず、絵画表現の限界を感じて、文筆活動に傾斜する時期もありました。やがてロシア構成主義やドイツのダダイズムの作品を知り、既成概
念に捉われずに様々な素材を用いて制作するようになります。それは、《トロウッド》や《カラカラ》のような半立体的な作品へとつながっていきました。
1938年(昭和13)、二科会で前衛的な作品を発表していた作家たちとともに「二科九室会」の結成に参加。翌年には福沢一郎[ふくざわ・いちろう]が主
唱する前衛美術団体「美術文化協会」に加わりますが、斎藤はそこでの主流であったシュルレアリスムに傾倒することなく、黒の合板を重ねたレリーフ《ゼロイ
スト》のような抽象作品を制作しました。
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